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鍼灸の古典「難経」のお勉強コーナー
~参考文献~
「難経入門」遠藤了一著 オリエント出版社 「難経ハンドブック」池田政一著 日本の医道社
「難経の研究」木間祥白著 日本の医道社 「難経本義」山下詢訓 名著出版
「わかりやすい難経の臨床解説」杉山勲著 緑書房 「ハイブリッド難経」割石務文著 六然社
「難経解説」東洋学術出版  「意釈八十一難経/小曽戸丈夫+浜田善利 共著」築地書館
「経絡治療 難経を学ぶ」名越礼子 経絡治療学会 「難経真義」池田政一著 六然社
図説 難経~易経と難経 西岡由記著 宝栄出版 「難経鉄鑑」広岡蘇仙著・伴尚志訳 たにぐち書店


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  脈学~三部と経脈との関係は?

十八難曰、脈有三部、部有四経。手有太陰陽明、足有太陽小陰、為上下部、
 何謂也。
然、手太陰陽明金也、足小陰太陽水也、金生水、水流下行而不能上、
 故在下部也。足陰少陽木也、生手太陽小陰火、火炎上行而不能下、
 故為上部。手心主小陰陽火、生足太陰陽明土、土主中宮、故在中部也。
 此皆五行子母、更相生養者也。
脈有三部九候。各何主之。
然、三部者寸関尺也、九候者浮中沈也。上部法天、主胸以上至頭之有疾也。
 中部法人、主以下至斉之有疾也。下部法地、主斉以下至足之有疾也。
 審而刺之者也。
人病有沈滞久関聚、可切脈而知之耶。
然、診在右脇有積気、得肺脈結。脈結甚則積甚、結微則気微。
診不得肺脈、而右脇有積気者何也。
然、肺脈雖不見、右手脈当沈伏。
其外疾、同法耶、将異也。
然、結者脈来去時一止、無常数名曰結也、伏者脈行下也。浮者脈在肉上行也。
 左右表裏法皆如此。
 仮令、脈結伏者、内無積聚、脈浮結者、外無疾、有積聚、脈不結伏、
 有疾、脈不浮結、為脈不応病、病不応脈、是為死病也。



 十八難に曰く、脈に三部あり、部に四経あり。手に太陰・陽明あり、足に太陽・小陰ありて上下の部を為すとは、何の謂ぞや。
然り、手の太陰・陽明は金なり。足の小陰・太陽は水なり。金は水を生ず。水は流れ下りて、上ること能わざるが故に下部に在るなり。足の陰・小陽は木なり。手の太陽・小陰の火を生じ火炎は上行して下ること能わざるが故に上部と為る。
手の心主小陰の陽火は、足の太陰・陽明の土を生ず。土は中宮を主るが故に中部に在るなり。
此れは皆な五行の子母の更がわる相い生養する者なり。
脈に三部九候あり。各々何れが之を主るや。
然り、三部とは、寸・関・尺なり。九候とは、浮・中・沈なり。上部は天に法り、胸以上頭に至る。疾のあるを主るなり。中部は人に法り、以下に至る疾のあるを主るなり。下部は地に法り、以下足に至疾のあるを主るなり。審らかにして之を刺す者なり。
人の病に沈滞久しく積聚すること有り。脈を切して之を知るべきや。
然り、病が右脇に在り、積気が有るを診れば、肺脈が結為るを得べし。脈が結すること甚だしきときは積も甚だしく、結すること微かなるときは気も微かなり。
肺脈を得ずして、右脇に積気が有る者は何ぞや。
然り、肺脈は見われずとも雖も、右手の脈は沈・伏なるべし。
其の外の疾と法を同じくするや。将また異にするや。
然り、結は脈の来去の時に一止して、常数なきを名づけて結というなり。伏は脈が筋下を行むなり。浮は脈が肉上に在りて行むなり。左右表裏とも法は皆な此の如し。
仮令ば、脈が結伏する者が内に積聚無く、脈が浮結する者が外に疾無く、積聚あるに脈が結伏せず、疾あるに脈が浮結せざるは、脈が病に応ぜず、病が脈に応ぜずと為し、此れを死病と為すなり。


(訳)
/十八難
 18難にこう書いてあるけど・・・
脈には上中下(寸関尺)の3部位ある、それぞれの部位にはそれぞれ4つの経があると。
手には太陰経と陽明経、足には太陽経と少陰経があって、それらは、上下の部位だと。
これはどういうことなんだろう?

/
 それはだな、五行で言うところの、手の太陰経と陽明経は、金なんだ。足の少陰経と太陽経は、水なんだよ。金は水を生むだろ?水は下に流れるけど、上には行かない。だから、金性の手の太陰経と陽明経は上の部位の寸口にあって、水性の足の少陰経と太陽経は下の部位、尺中にあるというんだ。

同じようにね、足の厥陰経と少陽経は木。手の太陽経と少陰経は火なんだ。炎は上にのぼるけど、下には行かないだろ。だから、火性の手の太陽経と少陰経は上部・寸口にあって、それより下の部位に木性の足の厥陰経と少陽経があるんだ。

手の心主と少陽経は、火(相火)。足の太陰経・陽明経の土を生み出すけど、土は中央を主るから、足の太陰経・陽明経は中部の関上にあるんだな。このように、みんな五行の母子関係、相生関係によって、上中下(寸関尺)の位置関係が決まってくるんだよ


/十八難
 それじゃあ、脈の三部九候ってのはなに?それぞれ体のどこの部分を診ることができるの?

/
 うむ。三部ってのは、寸関尺のことだ。九候というのは、浮中沈なんだ。
上部は天になぞらえて、胸から上で、頭までの病気を診るところ。
中部は人になぞらえて。横隔膜から下で、ヘソまでの病気を診るとこだ。
下部は地になぞらえて、ヘソから下で、足までの病気を診る。
治療の時は、これらを見極めてから鍼を刺すんだぞ。

/十八難
 はい。人が長患いして、お腹に塊ができる積聚があるけど、これは脈をみてわかるの?

/
 そうだな、右の脇下に積聚があれば、それは肺の脈が結脈になってるぞ。脈が結脈で程度が激しかったら、積聚の状態も 同様に激しいんだ。もし、脈が微脈だったら、積聚もさもない。

/十八難
 もし、肺の脈が結脈じゃなかったら、右脇下の積聚をどうみます?

/
 それはだな、もし、肺の脈に結が感じられなかったとしたら、右手の脈全体が沈んで伏に感じられるだろう。

/十八難
 はぁ。外形上の慢性疾患も同じ解釈でよいのかな?それとも違う?

/
 結脈ってのは、ゆっくり脈が来て、去るときに一回止まる脈なんだ。常に一定でないものを結というんだよ。伏脈は、筋の下を流れるような脈。浮脈は、肌肉の上を行く脈。病が右にあるか左にあるか、表にあるか裏にあるかなどは、このように考えればよい。

たとえば、脈が結で伏なのに積聚がないとか、脈が浮で結なのに外に慢性的な病気がないとか、積聚があるのに脈は結でも伏でもないとか、慢性疾患があるのに脈が浮で結でないなど、脈にあっていない病気、病気が脈にあっていないというのは、死んでしまう病気といえるな。




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