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鍼灸の古典「難経」のお勉強コーナー
~参考文献~
「難経入門」遠藤了一著 オリエント出版社 「難経ハンドブック」池田政一著 日本の医道社
「難経の研究」木間祥白著 日本の医道社 「難経本義」山下詢訓 名著出版
「わかりやすい難経の臨床解説」杉山勲著 緑書房 「ハイブリッド難経」割石務文著 六然社
「難経解説」東洋学術出版  「意釈八十一難経/小曽戸丈夫+浜田善利 共著」築地書館
「経絡治療 難経を学ぶ」名越礼子 経絡治療学会 「難経真義」池田政一著 六然社
図説 難経~易経と難経 西岡由記著 宝栄出版 「難経鉄鑑」広岡蘇仙著・伴尚志訳 たにぐち書店


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 脈学~損脈・至脈の病証と治療法

十四難曰、脈有損至、何謂也。
然、至之脈一呼再至曰平、三至曰難経、四至曰奪精、五至曰死、六至曰命絶。
此至之脈也。何謂損、一呼一至曰難経、再呼一至曰奪精、三呼一至曰死、四呼一至曰命絶。此損之脈也。至脈従下上、損脈従上下也。
損脈之為病奈何。
然、一損損於皮毛、皮聚而毛落。二損損於血脈、血脈虚少不能栄於五蔵六府。三損損於肌肉、肌肉消痩、飲食不能為肌膚。四損損於筋、筋緩不能自収持。五損損於骨、骨痿不能起於床。反此者於収病也。
従上下者、骨痿不能起於床者死。従下上者、皮聚而毛落者死。
治損之法奈何。
然、損其肺者、益其気。損其心者、調其栄衛。損其脾者、調其飲食、適其寒温。損其肝者、緩其中。損其腎者、益其精。此治損之法也。
脈有一呼再至一呼再至、有一呼三至一吸三至、有一呼四至一吸四至、有一呼五至一吸五至、有一呼六至一吸六至。
有一呼一至一吸一至、有再呼一至再吸一至、有呼吸再至。
脈来如此、何以別知其病也。
然、脈来一呼再至一吸再至、不大不小曰平。一呼三至一吸三至、為適得病、前大後小即頭痛目眩、前小後大即満短気。一呼四至一吸四至、病欲甚、脈洪大者苦煩満、沈細者腹中痛、滑者傷熱、?者中霧露。一呼五至一吸五至、其人当困、沈細夜加、浮大昼加、不大不小雖困可治、其有小大者為難治。
一呼六至一吸六至為死脈也、沈細夜死、浮大昼死。
一呼一至一吸一至、名曰損、人雖能行猶当着床、所以然者血気皆不足故也。
再呼一至再吸一至、呼吸再至、名曰無魂、無魂者当死也、人雖能行名曰行尸。上部有脈下部無脈、其人当吐、不吐者死。上部無脈下部有脈、雖困無能為害、所以然者、譬如人之有尺樹之有根、枝葉雖枯槁根本将自生。脈有根本、人有元気、故知不死。


十四難に曰く、脈に損至ありとは、何の謂ぞや。
 然り、至の脈は、一呼に再至を平といい、三至を離経といい、四至を奪精といい、
 五至を死といい、六至を絶命という。此れが至の脈なり。何をか損という。
 一呼に一至を離経といい、ニ呼に一至奪精といい、三呼に一至を死といい、四呼に一至を絶命という。
 此れが損の脈り。至脈は下より上り、損脈は上より下る。
損脈の病を為すこといかに。
然り、一損すれば皮毛を損じ、皮は聚りては毛は落つ。ニ損すれば血脈を損じ、血脈は虚少にして、
 五臓六腑を栄する事能わざるなり。三損すれば肌肉を損じ、肌肉は消痩して飲食は肌膚となること能わず。
 四損すれば筋を損じ、筋は緩みて自ら収持すること能わず。
 五損すれば、骨を損じ、骨は萎えて床に起つこと能わず。
 此れに反するは収病に至るなり。
 上より下る者にして、骨が萎えて床に起つこと能わざる者は死し、下より上る者にして
 皮が聚りて毛が落つる者は死す。
損を治するの法は如何に。
然り、其の肺を損ずる者は其の気を益し、其の心を損ずる者は其の栄衛を調え、其の脾を損
 する者は其の飲食を調え、其の寒温をほどよくし、其の肝を損ずる者は其の中を緩やかにし、
 其の腎を損ずる者は其の精を益す。此れ損を治するの法なり。
脈に、一呼再至・一吸再至あり、一呼三至・一吸三至あり、一呼四至・一吸四至あり、
 一呼五至・一吸五至あり、一呼六至・一吸六至あり、一呼一至・一吸一至あり、再呼一至、
 再吸一至あり、呼吸再至あり。脈の来たること此の如きは、何を以て其の病を別ち知るや。
然り、脈の来ること一呼再至・一吸再至にして、大ならず小なるときは即ち頭痛み目眩し、
 前が小に後が大になるときは即ち胸満し短気なり。
 一呼四至・一吸四至なるは病は甚だしからんをを欲し、脈の洪大なる者は煩満を苦しみ、
 沈細なる者は腹中痛み、滑数なるは熱に傷られ、満なるは霧露に中れるなり。
 一呼五至・一吸五至なるは其の人は当に困すべく、沈細なるは夜に加わり、
 浮大なるは昼に加わる、大ならず小ならざるは困すといえども治すべく、大小の有る者
 は治し難しとなす。
 一呼六至・一吸六至なるは死脈なり、沈細なるは夜に死し、浮大なるは昼に死す。
 一呼一至・一吸一至を名づけて損といい、人は能く行くといえどもなお当に床に着くべし、
 然る所以の者は、血気が皆な不足せるが故なり。
 再呼一至・再吸一至・呼吸再至を名づけて無魂をいう。無魂なる者は当に死すべく、
 人は能く行くといえども名づけて行屍という。
 上部に脈あり、下部に脈無きは其の人は吐すべく、吐せざる者は死す。
 上部に脈なく、下部に脈あるは、困すといえども能く害をなすこと無し。
 然る所以の者は、譬えば、人に尺が有るはなを樹に根があるがごとく、
 枝葉が将に枯んとするも、根本は将に自ずから生くべし。
 脈に根本があるは、人に原気あることなり。故に死せざることを知るなり。


(訳)
/十四難
 脈に、損脈(=遅脈)と至脈(=数脈)があるというけれど、それはどういう意味なの?

/
 それはね、至脈というのは、一呼吸のうち、一呼に二つ打つ脈を平脈といって、三つ打つのを離経といって、四つ打つのを奪精といって、五つ打つのを死脈といって、六つ打つのを命絶ということなんだよ。

損脈というのは、一呼吸のうち、一呼に一つ打つ脈を離経といって、二呼に一つ打つ脈を奪精といって、三呼に一つ打つ脈を死脈といって、四呼に一つ打つ脈を命絶ということなんだ。

離経というのはね、正常の度から離れていることなんだ。
奪精というのはね、精気が抜けた脈のこと。
死脈というのはね、死にそうな脈のこと。
命絶というのはね、間違いなく死ぬ脈のことなんだ。

至脈は、下から上へ病が伝わるもので、つまり、腎から肺へと伝わる。
損脈は、上から下へ病が伝わるもので、つまり、肺から腎へと伝わる。

/
 損脈だとどんな病気になるの?

/
 それはね、一損すると、肺気が損じているから、皮毛を損なって、皮にしわがよって毛が抜けちゃう。
二損すると、心気を損じているから、血脈を損なって、血が少なくなって五臓六腑を養うことができなくなっちゃう。
三損すると、脾気を損じているから、肌肉を損なって、肉がやせ衰えて、食べたり飲んだりしても、肌や皮を作ることができなくなっちゃう。

四損すると、肝気を損じているから、筋や腱を損なって、筋は弛んで、収縮運動ができなくて、体を保つことができなくなっちゃう。
五損すると、腎気を損じているから、骨を損なって、萎えて床からおきることができなくなっちゃう。
これの反対のものが、至脈の病なんだよ。
脈ができなくなるものは、死ぬだろう。
至脈で、病が下から上へ進んだもので、皮膚にしわができて、毛が抜けると死ぬだろう。

/
 損脈の状態を治すためには、どんな方法があるの?

/
 そうだなぁ、肺気を損じたものには、その気を補ってあげる。
心気を損じたものには、衛気を営血を整えて血行をよくしてあげる。
脾気を損じたものには、寒さや温かさを調整してあげる。
肝気を損じたものには、甘味をとって緩めてあげる。
腎気を損じたものには、精気を補ってあげる・・・それがいいね。
そういう方法だね。

/
 脈に一呼に二回、一吸に二回至るものがある。
一呼に三回、一吸に三回至るものがある。
一呼に四回、一吸に四回至るものがある。
一呼に五回、一吸に五回至るものがある。
一呼に六回、一吸に六回至るものがある。
一呼に一回、一吸に一回至るものがある。
二呼に一回、二吸に一回至るものがある、よね。
脈がこんなふうになるけど、こういう病気はどんなふうに判別したらいいのかな?


/
 それはね、脈がね、一呼に二回、一吸に二回で、大きくも小さくもないことを、平っていうんだよ。

一呼に三回、一吸に三回ってのは、病気になりはじめということなんだ。
寸口の脈が大きくて、尺中の脈が小さいと、頭痛とめまいがおこるんだ。
寸口の脈が小さくて、尺中の脈が大きいと、胸が膨満して呼吸が短くなるんだ。

一呼に四回、一吸に四回ってのは、病がどんどんひどくなってきたってことだ。
脈が洪で大になると胸や腹が一杯になって煩悶する。
脈が沈んで細くなると、おなかが痛くなる。
脈が滑になると、熱にやられてしまったということ。
脈が渋くなると、霧や露にやられてしまったということなんだ。

一呼に五回、一吸に五回ってのは、相当に重篤だってことだ。
脈が沈で細のときは夜に重くなって、脈が浮で大のときは昼に重くなって、
脈が大きくも小さくもないときは、重病だけどもまだ治る可能性があるが、
大きかったり小さかったりするときは、難治だといえる。

一呼に六回、一吸に六回ってのは、死脈といえるな。
脈が沈で細なものは、夜死ぬ。
脈が浮で大なものは、昼死ぬ。

一呼に一回、一吸に一回ってのは、損脈というが、今は歩けてもそのうちに歩けなくなって床につくことになる。
というのはね、血や気が不足しているからなんだ。

二呼に一回、二吸に一回ってのは、無魂というが、それは、必ず死ぬということなんだ。
人は歩けなくなって生ける屍となるんだ。

寸口に脈があって、尺中に脈がない人は吐く。吐かないと死ぬ。
寸口に脈がなくて、尺中に脈がある人は苦しんでも死なない。
というのは、たとえれば、尺中の脈がある人は、樹木に根があるようなもので、枝葉が枯れても根っこがあれば生き返るようなものだ。
脈に根があるというのは、人が元気になるということで、死ぬことはないんだよ!




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