患者さん(Mさん)と、私の短歌集です。気楽に読んで下さい。 |
・梅の香が 風に運ばれ 春さそい 庭にも聞こゆ うぐいすの声 M
ベッドの中で聞く、うぐいすの声は、まさしく、春の訪れを感じるものなのかも知れません。
平成十一年 春
・春になり 庭にたわわの さくらんぼ 争い悲し 鳥と人間 M
Mさんのお宅の庭に、さくらんぼがたくさんなっています。
それを奥様が、私や訪問看護婦さんなどにくださるために、
梯子に上って、 鳥に突かれたものを嘆きながら、
孤軍奮闘して取っている様子を詠まれたようです。
奥様の奮闘のおかげで、とても美味しいさくらんぼうを食することができました。
・ うららかな 日溜まりのもと あくびひとつ そよ吹く風に 春を感じつ 由貴子
庭を何気なく眺めていたら、こんなのんびりした気分になりました。
・ 雨風に 打たれつ 空を 舞う雲雀 雲の切れ間に 光差すかも M&由貴子
Mさんと私との合作。 「雲の切れ間に 光差すかも」に、上の句をつくってもらいました。
・ 見渡せば 田に一面の 蓮華草 遊ぶ童の 顔にも春が M
映像が浮かんできそうです。
・ しだれ舞う 淡き桜の花びらよ 青空キャンバス春色絵の具 由貴子
往診途中の風景を詠んでみました。
平成十一年
・初夏 藤棚に 枝垂れ落ちたる 藤の花 甘き香りが 五月の空に M
五月の風景として、ニュースなどで見たことがありますが、
実際には知りません。甘い香りにさそわれてみたいです。
・ 庭の木に 朝早くから 舞い降りて 眠い私を 起すな鳥よ M
・ 五月晴れ 陽光照らし 萌芽する 生命の息吹 心ふるわす 由貴子
平成十一年 梅雨
・晴れた日は 車に揺られ 遠出して 野原を駆ける 犬と叔父さん M
・ しとしとと 降りしきる雨 見せられて 行けぬ散歩に ため息 寝息 M
この2作はMさんの飼っている犬のシルキーことです。
「叔父さん」は奥様の弟さんのことで、介護のお手伝いをして下さっています
シルキーは、散歩が大好きですが、雨が降っているとつれていってもらえません。
・カッパ着て 走る往路を 照らすのは 夫人の元気 主人の笑顔 由貴子
雨の日に自転車で往診する私の心境です。
・ 庭の木の 渇いた肌に 梅雨の雨 松や桧の 緑が映える M
・ 耳元に ブンとうるさい 蚊が来ても 動かぬ我が身の 腹立たしさよ M
・ 梅雨休み 夕暮れ時の 富士の山 陽に照らされて 紅々と見ゆ M
以下3作は、コメディカルとして働く私達を詠んでくれました。
・三人の 心やさしい 看護婦に 看られて嬉し 訪問の日々 M
訪問看護婦さんのこと。
・ お風呂やの 若者達に 磨かれて 心身共に 光り輝く M
入浴サービスの方達のこと。
・ 独身の 美人鍼師に 打たれれば どんな病も ピタリと治る M
私のこと(笑)。
この短歌以降、より一層、みんな気分よく仕事をしています(笑い)。
平成十一年 夏
・ 友達と 海で遊んだ スイカ割り 目隠しされて 何処へ行くやら M
少年時代を思い出されて詠まれたのでしょうか。
・ 朝早く 眠気を覚ます 蝉時雨 うるさき声に 暑さひとしお M
夏の到来を実感します。
・ 一日を 表の見 える 玄関で 誰を待つのか 犬のシルキィ M
シルキーは、往診に行くと、必ず玄関で迎えてくれます。
こちらが動揺する程(笑)の歓待ぶりです。
・ 天の川 飾り付けした 笹竹を 届けておくれ 思う人へと M
この「思う人」と言うのは、いったい誰?と、話題になりましたが、
「たぶん、奥様」と言うことで、ひとまず、終息しました。
・ 夏の朝 夜露に濡れた 朝顔が 朝日を浴びて まぶしく光る M
・ 夏休み 子供が家に いる為に ふだんの暮らし 出来ない私 M
家庭を持っている訪問看護婦さんのことです。
こうやって、Mさんは、私達のことを観察している様です。
・ 誰想う 夏の終わりの 海に来て 打ち寄せる波 見つめながらも M
これは、どうも私を歌ったものらしい(笑い)。 こうやって、Mさんは・・・・(笑)。
・ 涼さそう アスファルトに水をまく 照りつける陽射し さっきの水あと もう消えてしまった 由貴子
打ち水をしている情景を詠んでみました。
続く。